風力発電 地球を考える会の提言の危うい点

 「地球を考える会」は温暖化対策において、首相に以下の提言をしました。

・「二酸化炭素(CO2)の排出削減と生活の質の維持・向上の両立が不可欠」としたうえで、再生可能エネルギー風力発電太陽電池などの開発促進だけでなく、原子力発電の世界的な利用拡大に向けて日本は貢献してゆくべきである事。

(勿論原発技術の進歩した日本が、これから新たに原発を建設してゆこうとしている国々に最先端の安全技術を注入していくことは重要です。)


原発は、発電時にCO2を排出しないこと(ウラニウムなど希少鉱物の採掘に使われるエネルギーによる二酸化炭素発生を考慮していないので注意が必要。)や化石燃料の高騰、資源の枯渇の見通しから世界的に見直しが進んでいる事(原子力ルネッサンスと呼ばれている)を報告しています。

ところでヨーロッパやアメリカでは、チェルノブイリの教訓やスリーマイル島事故などの経験を経て新たな原子力発電所の建設を凍結してきました。(フランスを除く)原子力発電の開発や設置が遅れていた日本はその間に着々と新たな原子炉の建設を進めてきました。


日本では欧米諸国が、新規の原発の設置をストップしている間に原子力発電の新たな技術開発の蓄積をもたらし、現在ではアメリカで新規の原発の受注に成功するまでになっています。

このように日本の原子力技術開発が進んでいることは間違いありませんが、脱炭素社会を迎える上で、あたかも原子力ルネッサンスの流れが世界の大きな潮流のごとく捉えられるのはどのようなものでしょうか。


日本がエネルギー開発を原子力の技術開発にのみに傾注している一方、欧米では新エネルギー、あるいは再生可能エネルギーと呼ばれる、風力発電技術の開発の蓄積をしています。


地球を考える会の意見では、化石資源の枯渇、(石炭は120年ほどで枯渇してしまう)を危惧していますが、希少資源であるウラニウムは、もっと前に枯渇してしまうであろう、という予測がなされているのを、どのようにお考えなのでしょうか。


核燃料リサイクル、(プルサーマル計画)MOX燃料の使用によりその全てが解決するかのような事が電力業界において喧伝されていますが、実際核燃料の燃えカスでリサイクルできるのは数パーセントに過ぎず、あとの残りは全て、国土の狭い我が国で処分地に困っている、放射性廃棄物になってしまう、という事実はあまり一般に知られていません。


さらに再生可能エネルギーの普及に全力を、と提言していますが、例えば、この狭い日本の国土に、美しい景観も何もかも無視し、風況を考慮したうえで風力発電機を可能な限り設置したとしても全電力量の10%を賄えるに過ぎないという事が、専門機関において報告されています。

また、風力発電の普及を本気で考えるなら洋上ウインドファームの開発が欠かせないということは欧米では常識になっています。(日本ではまだまったく着手されていない。)

しかしこれらの事にも全く踏み込んで述べられてはいません。

地球を考える会ならばこのような不完全な提言ではなく、もっと具体的な提言でなくては早急なCO2排出削減の目標達成には間に合いません。


そして、ガソリンの高騰で車が走れなくなり、庶民の生活必需品も高騰しているのに、道路をもっと作らなくてはならないと考えることしかできないような国の政府にはよく判らないのでは?